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昨日、ある飲食店にいたら、近くの席の男女の会話が耳に入ってきた。男のほうはワインをがぶがぶ飲んでいて、どんどん声が大きくなるから、聞き耳を立てなくても会話が耳に入ってきた。 聞きたくなかった会話だった。 その男女はともに、デザイン関係だか絵描き関係だかの仕事をしているらしい。男のほうはそれだけでは食えなくて、DTPのバイトをしているらしく、DTPに詳しくない女にこう説明していた。 男「InDesignてのとIllustratorてのとPhotoshopってソフト使えば誰でもできる。馬鹿でもできる。Kちゃん(一緒にいた女)がまったく未経験で仕事始めたとすんじゃん? 1ヶ月で覚えられる。チョー簡単」 女「へー、そうなんだ」 男「うんうん。デザイナーからデータもらうじゃん? あとコピペするだけだから。馬鹿でもできる」 なるほどこういう次元でDTPという仕事を捉えているヤカラがいるから出版物の品質が落ちていくんだな、と思った。こういうことを言うのは、私が現役のDTPオペレーターだった頃にもいたけど。 DTPをやっていた頃、クライアントのどんな要求にも応えられる・どんな組版もできる、という自信がつくまでに7年はかかった。その7年間は、修業しながらの、試行錯誤しながらの、綱渡りの仕事だった。 どうか組版を舐めないでほしい。あの仕事はなかなか奥が深いし、追求していけばそれだけ面白い。「馬鹿でもできる」なんて口が裂けても言えなくなる。女の子にも「DTPってけっこう深淵な仕事でね……」と胸を張って言うことができる。
by macondo
| 2013-09-07 00:21
| 本
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